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不動産を含む遺産分割協議はどうする?

(Jimmyblog-No.0119) 不動産は切り分けられない 相続が起こり、遺産分割協議を行うことになったとします。 遺産が現預金や、すぐに換金できる有価証券(株など)等だけであれば、たとえば「法定相続分で分けましょう」と決まれば、それで遺産分割協議はまとまります。 けれども 遺産に不動産(土地・建物等)が含まれていたら少しハードルが高く なります。なぜなら、 通常すぐには換金できず、切り分けることも困難 だからです。だれか1人の相続人が取得するといった場合も、他の相続人とのバランスをどうするか考える必要があります。 事例 遺産:土地・建物(時価1億円、相続税評価額6千万円)、預貯金4千万円 相続人:AとB 法定相続分:1/2ずつ この相続で、AB間で「遺産は法定相続分で分けようか・・」という話になったとします。 ・預貯金はAとBが4千万円×1/2=2千万円ずつ取得することで合意しました。 ・不動産(土地・建物)はAが取得したいと言い、Bもそれは了解しました。 さてこのままでは、遺産を法定相続分で分けたことにはなっていません(Aが多すぎる)。ではどうすればよいのでしょうか? 本人同士が良いならOK 遺産分割の場面で、 法定相続分はあくまでも目安 であり、すべての遺産を法定相続分で分けなければならないワケではありません。Bが「べつに・・これでOK」と言うなら何も問題はなく、Aが不動産と預貯金2千万円、Bは預貯金2千万円を取得することで遺産分割協議はまとまります。 相続税は取得した財産のバランスに応じて負担 するので、Aが多く支払うこととなります。 不満があれば代償金で解決できる Bが「不動産についても法定相続分のお金はもらいたい」と主張したときは、AがBへ、不動産の価値の1/2相当額(時価ベースで考えるならば1億円×1/2=5千万円)を自分の財産から別途支払うという解決策があります。 このような方法を“ 代償分割 ”、やり取りするお金を“ 代償金 ”と言います。 代償金と相続税の関係 さて、代償金をやり取りした場合、相続税のバランスに影響するのでしょうか? 結論から言うと、影響させないことができます。 先の事例で、やり取りした時価ベースの代償金5千万円をそのまま申告すると、AB間の相続税のバランスは崩れます。理由は、相続税の申告というのは相続税評価額によるためです...

消費税インボイス相談会

   (Jimmyblog-No.0112) インボイス登録はするべきか インボイス制度開始まで残り3ヶ月を切りましたが「インボイスは気になるが何だかよくわからないので何もアクションを起こしていない。このままで大丈夫なのだろうか・・」と不安を抱えている事業者の方々もまだまだ多いのではないでしょうか。 今回(令和5年7月4日)青色申告会の相談会の担当となり、数件のインボイス相談に対応しました。それを経験して改めて思ったことは、 インボイス登録をどうするかの判断は、ケースバイケース&あくまでも予測に基づいて検討するしかない部分もあり、それほど簡単なものではない という事です。 さまざまな経過措置等が追加されているが インボイス導入に向けては何度も改正が行われ、現在さまざまな経過措置等が設けられています。 初めて消費税に関わることとなる事業者の事務負担を軽減したり、小規模な事業者については期限はあるが少額不追及とするなど、インボイス登録を促す方向で、あの手この手の手続き等柔軟化措置が準備されています。 けれどもやはりインボイス登録すべきかどうかは、事業者一人一人が、自分の置かれている状況ごとに、メリット・デメリットの度合いを考えあわせて判断しなければなりません。 特に これまで消費税申告が不要だった免税事業者がどうすべきかは、慎重に判断することが大切 です。理由は、どのような選択をするにせよ、 よく理解できないまま決めてしまうと「こんなはずではなかったのに・・」という事態になってしまうリスク があるからです。 何かしらの個別相談はするべき 現在、税務署でもさまざまなインボイス周知のための活動がされています。また、税務署以外でも、今回のような予約制の相談会や随時のインボイス相談ができる場もあります。 そもそも消費税のしくみを理解すること自体、簡単なことではありません。プラス、インボイスについて自力で検討することには無理がある場合が多いと思われます。 「どうしたらいいかわからない」のはごく普通のことなので、不安がある方は思い切って税理士等へ相談することをお勧めします。

贈与税の令和5年度改正 | 相続時精算課税では何が変わったのか

  (Jimmyblog-No.0101) 贈与税が変わった?相続時精算課税の場合 令和5年度税制改正で贈与税が変わった!とウワサになっていますが、相続時精算課税についてはどう変わったのでしょうか。 すでに相続時精算課税制度を選択している方もそうでない方も、今後の 自分に関係あるのかorないのか?気になっているのではないでしょうか。 今回は相続時精算課税について、基礎から改正内容までをご案内します。 相続時精算課税とは?の基礎知識 暦年課税は、贈与の相手がだれでも年110万円までなら贈与税はかかりません。年110万円を超えると税率10%~55%の超過累進税率で、もらった人に贈与税がかかります。 そして贈与税の課税制度にはもう一つ、 選択届出をした親子などだけが使える相続時精算課税 があります。内容は、 60才以上の人から成人の子や孫などへの贈与について、要件を満たせば複数年累計2,500万円までは贈与税がかからず、オーバーしても定率20%の贈与税で済む というものです。ただし一度選択届出するとやめることはできません。そして将来相続が起こったら、この制度でもらった財産は相続財産に加算して相続税を計算します。つまりこの制度での贈与は “相続財産の前渡し” です。 相続時にはオーバーして支払った20%の贈与税があれば相続税から控除し、控除しきれなければ還付となり精算されます。 精算課税の改正事項は2つ 令和5年度改正で相続時精算課税について大きく変わった事は2つあります。 改正①精算課税でも年110万円までは非課税で申告も不要、さらに相続時加算も不要 これまでは精算課税を選択するとその後は少額な贈与であっても贈与税申告をしなければなりませんでした。そして相続時にはそのすべてを加算する必要がありました。 しかし 令和6年の贈与からは、累計2,500万円とは別枠で年110万円までは贈与税ゼロで申告も不要、相続時にも加算不要 となりました。 改正②贈与された土地・建物が被災したら再評価 改正前は、精算課税で贈与した財産が相続時にたとえ消滅していたとしても、加算するのは贈与時の評価額で、と決められていました。しかし令和6年以後の災害により贈与財産(土地・建物)が被害を受けたならば、相続時に再評価計算することとなりました。 暦年贈与か精算贈与かそれとも・・ もしあなたが贈与...

贈与税の令和5年度改正 | 暦年課税について何が変わったのか

 (Jimmyblog-No.0099) 贈与税が変わった?暦年課税の場合 令和5年度税制改正で贈与税が変わった!とウワサになっていますが、どう変わったのでしょうか。 そして自分に関係あるのかorないのか?TVや新聞、雑誌やネットではよくわからないよ・・・と思っている方、多いのではないでしょうか。 贈与税の課税制度には、だれでも使える暦年課税と、届出をした親子などだけが使える相続時精算課税があります。 今回は暦年課税について、基礎から改正内容までをご案内します。 贈与とは?贈与税とは?の基礎知識 贈与とは、生きている人から生きている人へ、財産(お金や土地建物など)がお互いの了解のもとでタダで渡されること です。 そして 贈与税とは、ある程度多額な財産を贈与された人が支払うべき税金です。ある程度っていくらか?と言うと、暦年課税の場合は年110万円がライン です。何回かに分けたり、複数の人から贈与されたりしても、1年間にもらった財産の合計額で考えます。 その年にタダでもらった財産の合計が110万円を超えたら、翌年2/1~3/16に申告と納税をしなければなりません。税率は10%~55%の超過累進税率(多くなるほど税率アップ)です。仮に1千万円の贈与を受けると、200万円程度の贈与税がかかります。 ただし内容によっては“贈与税は非課税”と決められている贈与もあります。たとえば家族間の生活費援助や冠婚葬祭などです。それらはそもそもカウントしません。 暦年課税の改正事項は2つ 令和5年度改正で暦年課税について大きく変わった事は2つあります。どちらも相続時の取扱いです。 改正①生前贈与加算が3年から7年へ たとえば毎年暦年贈与をしていて相続が起こった時、それにより財産を取得した人が直前3年間に贈与を受けていたなら、その贈与財産は相続財産に加算して相続税を計算することとなっていました。 このいわゆる 「3年内加算」の“3年”が“7年”へ延びました。ただし“令和6年の贈与から” なので、今後の相続でいきなり7年さかのぼることにはなりません。相続の時期によって徐々に加算年数が延びていき、令和13年以降の相続から7年フルにさかのぼって加算することとなります。 改正②生前贈与加算4年~7年内加算には控除枠100万円 改正による負担増の緩和措置として、 相続前4年~7年内の生前贈与財...

更正の請求 | 経費計上漏れに気付いたら

(Jimmyblog-No.0096) 個人事業者の確定申告で経費計上漏れがあった時  個人事業の所得税の確定申告を申告期限(3月15日)までに済ませてほっとしていたら、 計上漏れの経費があったことが発覚 ・・・。 こんな時、どうすればよいのでしょうか? 税額が減る場合のやり直しは「更正の請求」 「修正申告」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。これは例えば売上計上漏れなどがあり、確定申告した税額が少なすぎた場合のやり直しのことです。 反対に、経費計上漏れ等、つまり いったん申告した税額が多すぎた場合のやり直しは「更正の請求」 という手続きになります。 更正の請求は義務ではなく、また面倒かもしれません。けれども 所得税だけではなく住民税や国保料などへも影響 するため、多額な経費計上漏れをそのままにしておくと税金や保険料の支払い過ぎとなってしまいます。 更正の請求書のフォーマットは1枚もの 国税庁ホームページに更正の請求書のフォーマットと書き方があります。以前は、当初の金額と正しく直した金額の両方を記載する書式でしたが、改正により令和4年分の所得税からは正しく直した金額だけを書くこととなっています。最終の税額のみ、当初の金額も記載して差額を計算します。 また、請求理由や請求をするに至った事情を記載する欄もあります。欄は狭いので、込み入った事情があれば別紙を準備して記載し添付することもできます。 根拠書類の添付が必要 確定申告では提出するのは青色申告決算書や白色申告なら収支内訳書で、経費の領収書等は手元に保管しておけばよかったのですが、更正の請求をするならば領収書等を添付しなければなりません。理由は、 いったん申告した税額を減額変更するにあたっては、それが正しいかを証明する根拠書類が必要 とされるからです。 所得控除(例えば障害者控除)を失念していた場合なら、障害者手帳などのコピーを添付すればよいだけですが、経費計上漏れの場合は、更正の請求用の青色申告決算書や収支内訳書、該当科目の元帳や漏れていた経費の領収書等の添付が必要になると考えられます。 期限は5年 更正の請求はいつまでも出来るわけではありません。原則、 法定申告期限(3月15日)から5年を過ぎてしまうと出来なくなる ので、誤りに気付いたら早めに行うことをお勧めします。 自力では無理だと思ったら、税...

寄附金の所得控除と税額控除

(Jimmyblog-No.0095) 寄附先によっては税額控除ができる 認定NPO法人等や公益社団法人等、政党等へ寄附 をした年には、要件を満たせば、所得控除ではなく、税額から直接一定額を引く 「税額控除」 を選択することができます。 所得控除と税額控除のちがい 所得控除とは、税率を掛ける前の“所得”から引くもので、この場合、寄附額×税率分(仮に所得税の上限税率10%であれば1割)程度しか税額軽減できません。 けれども税額控除であれば、所得×税率で計算した 税額からダイレクトに寄附額×30%or40%程度を引く ことができ、インパクトがあります。 なお上限税率が高い場合(33%以上の人)は、必ずしも税額控除が有利とは限りません。 税額控除の要件 所得控除では原則、対象となる寄附先からの領収書等があればOKですが、 税額控除は領収書だけでは適用できません。 公益社団法人等については、 その法人が税額控除の対象であることの証明書等 が必要です。また政党等なら所得控除の場合もですが、確認印のある「寄附金(税額)控除のための書類」なるものが必要です。 そして寄附先にかかわらず、 控除額の計算シート(計算明細書) の添付が必要です。 また、申告書第二表の 特例適用条文等欄へ 条文番号 (公益社団法人等なら措法41の18の3など) を記載 することとなっています。 e-Taxするとき e-Taxの場合、領収書・証明書等は添付不要とされていますが、添付不要であっても確認不要ではありません。また、捨ててよいわけでもありません。 要件を満たすことを証明する上記の書類はすべて(領収書だけでなく)入手し、手元で5年間保管する義務があります。

損害保険金 | 保険金収入は課税?損害や購入の処理

(Jimmyblog-No.0094) 個人事業者が事業用固定資産の損害について保険金をもらったら 事業に使用していた固定資産(機械、車両、建物など)が突発的な事故などで損害を受け、掛けていた保険からその損失を補填する損害保険金が入ってきたら、その保険金収入には税金がかかるのでしょうか? 結論から言うと、かかりません。理由は、個人が 損害保険契約に基づき支払を受ける保険金で、突発的な事故等により資産に加えられた損害に起因して取得するものは非課税 とされているからです。 故障・事故・被災などによる資産損失は では、たとえば事業用車両(簿価100万円)が事故で廃車になった場合、100万円は固定資産除却損(資産損失)として経費になるのでしょうか? 資産損失が経費になるかは、保険金額によります。 保険金額を超えるような損失があれば、その超える部分の金額だけが損失として経費 になります。 簿価100万円の車両がダメになったが保険金収入は60万円しかなかったならば、40万円を損失として経費計上することになります。けれども保険金収入が150万円だったなら、保険金で損失をカバーできていると考えて、除却損は無かったものとされます。経費にはなりません。 新たな固定資産を買ったとき さて、入った保険金も使って新しい事業用固定資産を買ったら、その経理処理はどうすればよいのでしょうか? 固定資産の取得価額は、通常の場合と同様に購入代価で計上し、減価償却 をしていくことになります。保険金を充てることで自己負担額は少なくて済むため「購入代価全額を取得価額にしていいのかな?」という疑問が浮かぶかもしれませんが、かまいません。所得税には、法人税のような「保険金で固定資産を取得した場合の取得価額の圧縮記帳」の規定はないからです。

相続放棄 | 分割協議で何ももらわないのとはちがう

(Jimmyblog-No.0093) 遺産はプラスのものだけとは限らない 相続が起こると、亡くなった人の財産などが被相続人(亡くなった人)から相続人へ移転します。必ずしもプラスの財産だけではなく、マイナスの財産つまり債務(借入金など)もあればそれも一緒に移転します。 よって財産<債務の場合などには、放棄も選択肢の一つとなります。 相続の放棄とは、財産と債務の承継をすべて拒否すること です。放棄は各相続人ごとに(一人だけでも)できます。 まずは債務(借金など)の有無を把握 なかなか難しい場合もありますが、相続が起こったならば、まずやるべきことは、被相続人の財産及び債務を調べることです。理由は、万が一 多額な借金などがあった場合、3ヶ月以内に「相続放棄申述書」を家庭裁判所へ提出しておかなければ、自動的に承継してしまう ことになるためです。 分割協議で何ももらわないことと放棄はちがう 調べたところ借金などは無さそうだったが、何らかの事情(今後ともあまり関わりたくないなど)があり、自分はプラスの財産もいらない、という場合、これも放棄になるのでしょうか? 誤りやすいのですが、それは放棄とはちがいます。よってその場合は、放棄の手続きをする必要はありません。遺産分割協議の場で「何もいらない」意思表示をするだけ(具体的にはその内容の遺産分割協議書に署名押印)でOKです。 さらに言うと、放棄手続きをすると他の相続人等へ思わぬ影響を及ぼすこともあるため、放棄するのであれば事前に専門家(司法書士・弁護士等)にも相談するなど慎重に行うべきです。 思わぬ影響とは 相続放棄をすると、相続人や相続分について、その相続人は初めから相続人でなかった(つまり存在していないような状態)という取扱いになります。争いがあるなどの場合、 よかれと思ってした放棄によって相続分の変更が起こり、さらなる状況悪化を招く結果になる ケースもあります。 生命保険金は受け取れる 相続の放棄をすると生命保険金は受け取れないのでは・・?との心配は不要です。該当する契約の 受取人であれば、みなし相続財産として受け取る ことになります。 なお、その場合、他の財産は相続していないが相続税の計算のカウント対象になります。ただし死亡保険金には一定の非課税枠があり、相続税がかかるかどうかはケースバイケースです。

所得税と住民税 | 103万円パートなのに住民税がかかる理由

(Jimmyblog-No.0091) 給与収入103万円で税金ゼロだとおもっていたのに住民税通知が!? いわゆる所得税の扶養の範囲内、年収103万円までに抑えてパート勤務していて、 所得税ゼロで安心していたら、翌年になって住民税の決定通知書が来てビックリ! という方、いないでしょうか? 理由は所得税と住民税で控除額がちがうから その理由は、 所得税と住民税では税額計算のときの控除額がちがう項目があるため です。 いわゆる基礎控除もその一つで、所得税は48万円だが住民税は43万円と少なくなります。 よって基礎控除だけで計算すると 所得税:給与収入103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0 だが 住民税:給与収入103万円-給与所得控除55万円-基礎控除43万円=5万円 と 住民税では課税所得が出てしまいます。住民税は定率10%なので5万円×10%=5千円の住民税(所得割)を納付しなければなりません。 生命保険料控除証明書があったのに・・という場合 パート先で年末調整する時、生命保険料などを支払っていて控除証明書ハガキが届いていたが、どうせ税金がゼロだからと提出していなかった、などはないでしょうか?生命保険料でなくても何か他の所得控除があるのに勤務先へ書類を出していなかった場合、それを確定申告すれば住民税が下がるor金額によってはゼロになる可能性があります。 確定申告で年末調整を上書きできる 「還付申告でもないのに申告?何か大変そうだし、あきらめようか・・」と思っているなら、そんなことはありません。年末調整は、勤務先があなたに代わって計算・申告をしてくれているだけで、何か漏れや誤りや、確定申告でしかできない事を申告するために「確定申告」なるものがあるからです。年末調整した後に 確定申告すると、情報が上書きされ、住民税の計算にも反映 されます。 PCからでもスマホからでもOK では確定申告って、実際に何をどうすればよいのでしょうか? 一番簡単なのは スマホ等からe-Taxで送信 する方法です。ただしマイナンバーカードと、それを読み取れるスマホ等が必要です。「そんなものはないよ~」という場合は、 スマホ等で作成したものを印刷して書面郵送提出 する方法もあります。 いずれにせよ“確定申告”などで検索して国税庁の「確定申告書等作成コーナー」へ入り“所得税”を選んで...

相続時精算課税とは | 累計2,500万円までの贈与なら贈与税ゼロ

 (Jimmyblog-No.0090) まだまだ知られていない相続時精算課税制度 「“相続時精算課税”って聞いたことはあるが内容は知らない」という方、案外多いのではないでしょうか。ざっくり言うと、 直系尊属(本人の父母、祖父母等)からの贈与についてこの制度を選択すれば、以後、累計2,500万円までの贈与は非課税で、2,500万円超の部分があっても20%の贈与税でよい(贈与の時点では) というものです。 子や孫などへの贈与について贈与時の税負担を軽減 60才以上の人から成人の子や孫などへの贈与であれば、暦年贈与の非課税枠110万円/年をはるかに上回る贈与をしてもその時点では課税しない、する場合も贈与税というよりは相続税を想定した低い税率(20%)での課税にとどめることで、次世代への財産移転を促す制度です。 選択届が必要で取りやめは不可 この制度を利用して贈与をするためには 「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要 です。また、 いったんこの制度を選択すると取りやめはできません。 そして相続時には、相続時点の財産と相続時精算課税で過去に贈与した財産を合算して相続税の計算をする必要があります(相続時『精算』課税なので)。 注意点も多々あり 当面の税負担がゼロor軽減されるのはよいのですが、実際に選択しようとする場合には、それによって将来不利になることはないか、事前の検討が必要です。 主な検討ポイントとしては、 ・相続時に合算するのは、原則、 贈与時の評価額 (相続時の評価額ではない) つまり、たとえば株や不動産などの価値が下落していたとしても考慮されず、過去の価額で相続へ取り込む ・相続時精算課税制度で贈与した財産(土地等)については 小規模宅地等の特例(土地等の評価8割減or5割減)は使えない ・相手が 孫などであれば相続税は通常の2割増し になる。理由は、一世代飛ばすことに対する割増課税 などが挙げられます。 改正事項あり 令和5年度税制改正大綱で、相続時精算課税贈与についても暦年贈与についても改正案が示されています。令和5年3月まで決定はしませんが、今後の贈与について検討する際には、改正の影響も考慮すべきです。贈与を予定している方は3月を待ち、改正も踏まえてシミュレーションしてみるのがよいでしょう。