賃上げ促進税制
(Jimmyblog-No.0157)
中小企業or個人事業者も税額軽減可
“賃上げした企業は節税できる”と盛んに言われている「賃上げ促進税制」。
自分も何かできるかもしれないが、いざ内容を知ろうとしても・・令和4年度改正、令和6年度改正と微妙にパンフレットの内容が変わっていたり、税額控除の上乗せ要件として“くるみん認定(いわゆるイクメン奨励)”、“えるぼし認定(女性活躍促進)”など聞きなれないネーミングが紹介されていて、何だか遠い世界の話のように感じてパスしようとしている方も多いのではないでしょうか。
ですが、落ち着いて内容を見れば、それほど複雑な制度ではなく、中小企業や個人事業者にとっても手の届くものであり、いくつかの要件をクリアすれば税額軽減の可能性があります。
適用期間がわかりにくい
そもそも、話をややこしくしているのは、適用期間がいつなのか、つかみにくい広報の仕方かもしれません。令和7年1月現在、ニュースとして広報されている「令和6年度改正」が適用されるのは少し先の話で、個人事業者ならば令和7年分(まだ始まったばかり、申告は1年以上先)から、法人であれば原則、令和7年3月決算申告から適用される制度です。
個人事業者の今回の申告(令和6年分)や法人の令和7年2月決算申告まで使えるのは、それより一つ前の「令和4年度改正」の内容です。
ではそれは、どのような内容なのでしょうか?
中小企業者等向け賃上げ税制(令和4年度改正)
資本金1億円以下の青色申告法人(中小企業)や従業員1,000人以下の青色申告の個人事業者等については、特別にシンプルな適用要件が準備されています。
それは、ザックリ言うと、単純に前年(前期)と今年(今期)の給与等を比較して、増加率が1.5%以上であれば、何がしかの税額控除(法人税や所得税を直接減額)ができる、というものです。具体的には、増加額×15%は減額できる可能性があります(法人税額or所得税額×20%がMax)。
給与として集計するものとしないもの、他の上乗せ措置の要件(教育訓練費の増加等)と上乗せ率、前年(前期)の中途で開業(設立)していた時の調整計算など、細かい話はありますが、まずは給与等(役員や親族等へのものは除く)が年ベースで増えているのかいないのかを見ると、可能性の有無が大体つかめます。
使えるかも・・?と思ったら、実際に細かい要件を満たすか、確認する作業へ進むのがよいと思われます。
申告時に明細書や付表の添付が必要
個人事業者の場合、税額控除額の計算は、準備された書式(明細書)を使って行います。
給与の集計にあたり、他者からの補填額(助成金等)を差引きしたり、内容によっては引かなかったりするなど計算は多少煩雑ですが、明細書にそれぞれの金額を記入していけば自然に計算できます。
順序としては「給与等支給額及び比較教育訓練費の額の計算に関する明細書(付表1)」を先に記入し、付表ができたら「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除に関する明細書(令和5年分以降用)」を作成します。
これにより、今回の申告で税額控除できる金額が確定します。
税額控除額は申告書へ記載して節税完了、明細書や付表は申告書とともに提出が必要です。
ちなみに法人の場合も添付書類は必要です。法人は「別表」なるものを用いて同様の計算を行うこととなります。
個人事業者で他の所得もあるとき
たとえば個人事業をしていて事業所得があり、その事業で支払った給与額が増加し、賃上げ促進税制の要件を満たしたとします。この場合、他の所得が無ければ、税額控除のMaxはその年の所得税額の20%なのですが、仮にこの事業主に他の勤務先がありそこからの給与所得があったとします。すると、税額控除のMaxを計算するにあたり、その年の所得税額のうち事業所得対応分(事業所得/(事業所得+給与所得))×20%が上限となります。
この調整計算により、給与所得が多額なケースでは、思ったほど税額控除できなかった・・という結果になることもあります。
大企業向けも要件を満たせば使えるが
中小企業者等だからと言って“中小企業向け”しか使えないわけではなく、要件を満たせば、大企業向け(と言うか全企業向け)の賃上げ促進税制を適用することもできます。
ですがその場合、要件を満たすかの判断は簡単ではありません。
単純に給与等の額を比較すればよいというわけではなく“継続雇用者給与等”なるものを別途、集計しなければならないなど、時間と労力がかかります。
そして満たすべき増加率も1.5%では足りず、3%増などが求められます。
検討するかは、費用対効果を考えて決めるのがよいかもしれません。
自力で無理なら税理士等へ
「使えると思うが、明細書とか無理!」という場合は、税理士等へ相談するとよいでしょう。
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