開業前の設備投資と消費税
(Jimmyblog-No.0144)
開業年と翌年は消費税の免税事業者
たとえば今年(令和6年に)開業した個人事業者は、自ら消費税についての申請・届出等(インボイス登録や課税事業者選択届出等)をしなければ、原則2年間(令和6年・7年)は消費税の免税事業者です。意味は、初めの2年分については消費税の申告・納付は原則不要ということです。
開業にあたり、インボイス登録する必要のない業態(顧客がほぼ一般消費者等)であれば、通常この形(免税事業者)だと思われます。
ここで、開業年(開業日より前)に、たとえば店舗建物の購入・造作などの多額な設備投資をしていたとしたら、その支払に含まれている消費税はどうなるのでしょうか?
消費税還付のためには届出が必要
仮に、開業年の年間売上に係る消費税(仮受消費税)より、設備投資も含めた支払に係る消費税(仮払消費税)の方が多かったとして、その差額の還付を受けるためには、消費税の申告をする必要があります。
しかし免税事業者のままでは申告自体ができません。
よって、この場合であれば「課税事業者選択届出書」なるものを税務署へ提出し、令和6年1月1日から消費税の課税事業者になる必要があります。
この場合の届出書の提出期限は令和6年12月31日です。
課税選択届出書を出すと3年縛り
ただし、開業年の消費税は還付になるとしても、「課税事業者選択届出書」を出すことが必ずしもよい選択だとは限りません。むしろ、そんな届出はしない方がいいケースも多いと思われます。
理由は、「課税事業者選択届出書」を出して、開業年に多額な(税抜100万円以上等)設備投資の影響で消費税が還付になった場合には、3年縛りがあるからです。
3年縛りとは、3年間(たとえば令和6年~8年)は免税事業者に戻ることはできず、消費税の計算方法(原則・簡易・2割特例)のうち簡単な簡易課税や2割特例も使えない、というものです。
かなり苦しい状況に追い込まれることが想定されます。
届出前にはシミュレーション必須
設備投資に係る消費税が多いような気がしたとしても、還付と言ってもその全額が返ってくる訳ではありません。その年に年間の消費税計算を行うのであれば、計算には設備投資分も含まれることとなり、その結果、売上に係る仮受消費税より支払に係る仮払消費税が多ければ、差額が返ってくるというだけです。
そしてむしろ「課税事業者選択届出書」を出さなければ、少なくとも2年間(令和6年・7年)は免税事業者のままでいることができ、令和6年分の売上高によっては令和8年も免税であったはずが、「課税事業者選択届出書」を出すと、その3年分すべてを原則課税(支払についてインボイスも関係してくるなど管理が煩雑)で消費税申告・納付をしなければならないことになってしまいます。
「課税事業者選択届出書」を出すか出さないかの判断は、3年トータルでの税額の多寡の比較だけでなく、消費税申告絡みの事務負担が発生することも考慮して行うべきと思われます。
個別相談を
なお、各種届出や申請には期限があります。
また、インボイス導入により、これまでなかった変則的な取扱いもあります。
何らかの届出書等を提出しようとする時は、時間的余裕を持って複数の税理士等へ個別相談し、自分にとってベストな選択は何かを事前によく検討することをお勧めします。
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