相続税申告と遺産分割協議

 (Jimmyblog-No.0127)

相続税の申告と分割協議のビミョーな関係

ケースにもよりますが、相続税の申告と遺産分割協議なるものは、微妙な位置関係になることもあります。

各相続人は、信頼できる専門家に相談するなどして、一人一人が分割協議の内容を十分に理解し、その分け方に納得できる場合にだけ、遺産分割協議書へ署名&実印押印するべきと考えます。

何がビミョーなのか?

ひとことで言うと、相続税の申告書に記載されている相続税評価額は、必ずしも遺産分割時に存在する財産の時価ではない、ということです。

民法で定められた法定相続割合で分割しなければならないワケではありません(全員がOKならバランスは自由)。また、分割のもととすべき金額も法定されてはいませんが、法定相続割合を目安に公平に分けようとするならば、死亡日の評価額ではなく、通常それから数ヶ月経過後の分割協議日現在の遺産の時価(に近い金額)をもとに計算すべきと思われます。

理由は、不動産(土地・建物等)の相続税評価額は通常時価より大幅に低く、有価証券等はそもそも時価の変動があるものだからです。そして現預金であっても、死亡日以後に入出金がされ残高が変わっていることもあるためです。

よって、相続税評価額と時価の金額の乖離や、金融資産に係る時価等の変動を考慮せず、相続税の申告書(に記載された相続税評価額)だけを見て誰がどの財産を取得するかを決めてしまうと、法定相続割合で公平に分割したつもりだったのに、各相続人が実際に取得した財産の価額は予想外にアンバランスだった!?というビミョーな感じになってしまう恐れがあります。

相続税申告と遺産分割協議は別物

ケースによっては、上記のビミョーな問題など生じないこともあります。

けれども上記以外にも、相続税申告の対象ではないが遺産分割の対象にできるもの(たとえば死亡後に発生した有価証券配当金)があったり、反対に、相続財産として申告しなければならないが遺産分割の対象にはならないもの(たとえば生前に引出された一定の預貯金)があるなど、両者の実務上の取扱いには差異があります。

評価の詳細は専門的で理解できないとあきらめてしまい、相続税の申告期限に急かされて遺産分割協議書に署名&実印押印してしまうケースもあるようですが、後日の紛争防止のためにも、両者は別物だという意識を持ち、冷静に内容を検討することが大切です。

いったん遺産分割協議書へ署名押印してしまうとそれを覆すのは通常困難なので、悩んだ時は、押印前に税理士等へ相談することをお勧めします。

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