インボイスの2割特例と簡易課税の取下げ
早めに簡易課税の選択届出書を提出していませんか?
インボイスが始まるまで、あと1ヶ月を切りました。
これまで免税事業者だったが、取引先との関係を考慮し早めにインボイス登録した方の場合、同時に消費税の簡易課税制度選択届出書を提出していることもあるようです。
2割特例
インボイス導入に向けては、さまざまな経過措置が次々と打ち出されてきました。
そのうちの一つ、2割特例について、何の2割なのか?簡易課税との関係は?など、まだまだ理解されにくいまま周知がされていないようです。
2割特例とは、インボイスというものがなければ免税だった事業者に準備された、消費税納付額を簡単に計算できる特例です。売上だけをもとに「課税売上高(税抜)×消費税率(10%等)×2割」を納めればOK、つまり課税仕入(設備投資や経費支払など)は消費税計算には全く使わないというものです。
売上だけから消費税納付額を算出するというやり方は、簡易課税と同じです。そして簡易課税では、業種によって上記の2割が、たとえばサービス業なら5割、卸売業なら1割などと決まっています。
よって仮にサービス業の事業者であれば、2割特例の方が簡易課税の5割よりも納付額が少なくなり有利なため、簡易課税制度選択届出書を提出するメリットはありません。
簡易選択していると設備投資等に対応できない
メリットがないだけでなく、簡易課税を選択していると、設備投資等をした年に、売上に係る消費税よりも仕入(支払等)に係る消費税が多かったとしても、何も手当されません。
簡易課税を選択していなければ、このような場合には差額分の消費税が還付されます。が、簡易課税制度選択届出書を提出したままでいると、この場合、還付どころか納付しなければなりません。
簡易課税制度選択届出をなかったことにするには
“そんなしくみになっているなら、自分はサービス業なので簡易課税制度選択届出書を提出しなければよかった・・・・やめることってできるのだろうか?”と思った方、大丈夫です。
令和5年12月31日までに『取下書』なるものを提出すれば、なかったことにできます。
取下書のフォーマットは準備されておらず、取下対象となる届出書(すでに提出した消費税簡易課税制度選択届出書)が特定できるよう、提出日、届出書の様式名(表題)、提出方法(書面又はe-Tax)、届出者の氏名・名称、納税地及び提出した届出書を取り下げる旨の記載をし、署名の上、所轄税務署まで提出するよう案内されています。
2割特例は期限あり
当面は必要に応じて2割特例を使うとして、いつまで可能なのでしょうか?
個人事業者の場合、令和8年分まで使えることとなっています。
そして、令和9年分から簡易課税にしたい場合、令和9年12月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出すればよいこととされています。(通常は適用したい年が始まる前に提出しておく必要がありますが、インボイス導入期の特例的な取扱いとして、期限がゆるくなっています。結果として、令和9年分に限り、その年が始まった後に実績を見ながら、簡易課税を選択するかの判断を年末ぎりぎりまで引き延ばすことも可能となります。)
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